題材例(応援団支部

1 . 研究主題
生徒の関心・意欲を高める題材活用のあり方
− 「技術とものづくり「情報とコンピュータ」の融合の試みを通して−」

2 . 主題設定の理由
新学習指導要領が実施され、技術分野は、「技術とものづくり」「情報とコンピュータ」で構成されるようになった。これまでの「情報基礎」の授業は、コンピュータに関する基礎的な技能の習得を目指した学習内容であった。従来の「情報とコンピュータ」の学習はそれ自体で一つの領域を形成しており、取り組む作品がデータや印刷物の形にしかできない面が見られた。そこで「ものづくり」と「情報」の学習を融合させることができれば、相互に題材を活用し合い、コンピュータの活用がものづくりに生かされ、制作品という形となり、製作品が情報の題材に生かされて、データとして活用されれば、両領域ともに生徒の意欲を大いに向上させるのではないかと発想した。そこで研究では、生徒の興味・関心が高いコンピュータをひとつの道具として扱い、自分の製作したい作品の設計とともに、自分の製作した作品をデジタルカメラに撮り、写真を文章に貼り付ける。さらに作品製作中の苦労した点や工夫した点などを入力させ、作品集をつくり、発表する場を設定することとした。作品を発表する場をつくることによって、個性を生かし、生徒個々の存在を確認することができるようになるのではないかと考え本テーマを設定した。


3 . 研究目標
「技術とものづくり」「情報とコンピュータ」の題材の関連づけを通して、生徒の関心・意欲を高める題材活用のあり方を明らかにする。

4 . 研究仮説
(1 ) 「技術とものづくり」と「情報とコンピュータ」を融合させることによって、学習に対する興味・関心をより高めることができるであろう。
( 2) 作品集を制作することにより、各自の製作品の情報を有効に活用することができるであろう。

5 . 研究内容
本校の生徒は、小学校時の学習でマウス操作、文字の入力、インターネットによる情報検索をすることができる。そこで、中学校では、生徒の興味・関心をさらに高めるためにコンピュータを活用して設計を行う。また、作品をデジタルカメラで撮影し、写真を文章に貼り付ける。さらに作品製作中の苦労した点や工夫した点などを入力させ、作品集をつくり、発表する場を設定した。

( 1 ) 指導計画の概要
@ 技術・家庭科全体指導計画

1 学期 2 学期 3 学期
1 学年 生活の自立と衣食住 技術とものづくり( 3 5 時間)
2 学年 技術とものづくり( 1 8 時間)
情報とコンピュータ( 1 7 時間)
※ 両領域を必要に応じて、同時に実施
家族と家庭生活
3 学年 情報とコンピュータ( 1 8 時間)
生活の自立と衣食住

A 2 学年年間指導計画

題材 時間 目標 主な指導内容
@エネルギーについて 5時間 ・生活とエネルギーの関わりについて調べることができる。
・光エネルギーから電気エネルギーの発生のしくみを理解することができる。
・エネルギー変換のしくみ電気エネルギー→各負荷について整理することができる。(動力伝達と利用について使用例を示して理解据えることができる。)
・生活とエネルギーの関わりについて
・電気エネルギーの発生(光を電気にかえる)
・電気を動力にかえるしくみ
A 生活とコンピュータの関わりについて考えよう 9 時間 ・身近にあるマイコン内蔵の電気製品や、現金自動支払機などの活用について調べることができる ・生活とコンピュータの関わりについて
B 「からくり時計」のデザインをしよう ・O Sの特徴や各種機能を知り、マウス操作をすることができる。
・キーボードの配列を知り、キーボードを操作することができる。
・図形作成をすることができる。
・O S の基本的な操作について
・キーボードの操作をすることができる
・図形の作成から編集まですることができる。
C からくり時計の製作 13 時間 ・製作品のけがきをすることができる。
・材料取りをすることができる
・工作機械などを利用して部品加工をすることができる。
・ふりこの部分の加工をするこ
とができる。
・組立をすることができる。
・塗装をすることができる。
・けがき
・材料取り
・部品加工
・組立
・塗装
D 作品集の制作





8 時間 ・キーボードの配列を知り、キーボード操作をすることができる。
・かな漢字変換機能を活用して文章処理をすることができる。
・デジタルカメラで作品の撮影をし、貼り付けることができる。
・文章処理ソフトを活用し、文章を作成しながら、かな漢字変換。や文字飾りなど文章の編集をすることができる。・デジタルカメラで撮影し、貼り付けることができる。
E 発表 ・各班の代表を決め、発表することができる。  

※ 発表しないその他の生徒の作品集については、カードを配り時間外に各自でコン
ピュータから作品集を見させ、感想を記入させる


(2 ) 実践
@ 「からくり時計」のコンピュータによる設計
設計をするにあたり、コンピュータをひとつの道具として効果的に活用し、個性や創造性豊かな生徒の育成をめざすねらいとしてみた。そして、創意工夫する力や見通しをもって実践する力をつけさせたい。失敗を恐れることなく、試行錯誤を繰り返し、自らが考えた設計を獲得することで、充実感や満足感を味わわせたい。使用するソフトは山崎教育システム株式会社の「創る20 0 2 」の設計シミュレーションである。このソフトは、材料をコンピュータで描くこと。その材料を組み合わせて、3D で確認できるなど、自分でつくりたいものをあらかじめ見ることができる。


○ 生徒の感想から
・コンピュータを使って設計したのは、はじめてです。ふりこの部分をいろんな
形に変えたりすることができるので楽しかった。
・設計ができあがって、はやく作りたいと思った。
・手で書くよりも簡単に設計ができて楽しかった。
・作るのが楽しみ。
<考察>
コンピュータを用いることで、設計の変更が直ちに3画面で表示されるため、D
工夫がしやすいのではないだろうか。
1 年次のものづくりの製図の経験からコンピュータシミュレーションの利点を把
握できているように考えられる。そのため、より工夫してみよう資する姿勢を引き
出すことができる。また、完成した図面の美しさにより、製作への意欲が向上する
効果かある。


A 作品集の制作
完成した「からくり時計」をデジタルカメラで撮り、文章に貼り付け、自分の工夫し
た点や苦労した点を入力させる。それを、印刷し発表する場をつくる。そうすれば個性
を生かし、生徒個々の存在を確認することができるようになるのではないかと考える。
完成した作品集は、次年度の生徒に見させ、作品の例として参考にできるようにする。

一応ひよこです

1 苦労した部分ひよこを大きく動くように調節するのがとても大変だった.
2 工夫した部分ひよこをつける位置を説明書と少し違うところにつけて.バランスを良くした
3 作品を作った感想この作品を作るのは以外に簡単だったので.他のタイプの時計も作ってみたいと思った


小魚かも?くじら時計です

苦労した部分
1.小魚を大きく動かすのに小魚を止める硬さやクジラの振り子に付いている磁石の位置がとても難しかったです。
工夫した部分
2.時計の文字盤に全部数字じゃちょっとさみしいからスリー、ナインも入れてみた。
作った感想
3.小魚が思ったより動いて嬉しかった。クジラの振り子も大きくずーと動いたからかなり満足出来ました。


小魚・動きがかわいい!!

1 苦労した部分板を小魚に切るとき、うまくできなくてとても大変だった。.
2 工夫した部分天板、底板のかどを丸い感じにした所。.
3 作品を作った感想はんだづけが怖かった。小魚を振り子の磁石に反応させる所が.難しかった。また、造ってみたいと思った。


○ 作品集制作の感想
・自分でつくった「からくり時計」の作品集をコンピュータでつくって楽しかった。
・自分のつくった作品の写真を貼り付けたりすることができておもしろい。
・自分がつくった「からくり時計」がコンピュータの画面に出てきた時は、感動した。

〈考察〉
単にワープロ等で文章を制作させるより、自分の製作品を題材として、作品への取り組みを文章化することで、興味・関心が高まったり、完成の喜びがより高まる傾向
が見られた。

○ 発表会の感想
・いろいろな「からくり時計」の作品を見ることができておもしろかった。
・みんな、いろんな工夫をしていることがわかった。
・いろんな作品を見ることができて、自分ももっと工夫すれば良かった。

〈考察〉
他者の作品や取り組みから学ぶことで、自己の取り組みを見直し、反省や工夫点を考えることができた。また、学習内容を日常生活への応用へ発展していくことにつながる機会にして行きたい。

@ 自己評価カード( 例)

6 . 研究の成果
今回、生徒自らが製作する作品を設計し、作品集を制作することにより、「技術とものづくり」に対しても「情報とコンピュータ」に対しても、興味・関心をもち、意欲的に学習に取り組むことができた。設計段階では、生徒が「早く時計を作りたい」という声や「作るのが楽しみ」という声が聞けたり、製作段階でも、コンピュータで設計したものと照らし合わせ、意欲的に製作に取り組む姿を見ることができたこと。
 作品集の制作段階でも、自分が作った製作品を題材に作品集を作ったために、意欲的に作品の製作に取り組むことができた。また、作品集を発表する場を与えることにより、生徒は表現を工夫し、他の生徒にはない発表をするように取り組んだ。
 「情報とコンピュータ」の領域では現実的な作品がつくりづらい傾向があるが、他領域の題材と組み合わせることで、相互に刺激しあい、両領域ともに意欲が高められた。
 したがって「情報とコンピュータ「技術とものづくり」を単独で実施するよりも、」融合させて題材を工夫することが意欲化に有効であると考える。


7 . 今後の課題

 ひとつの題材で「技術とものづくり」「情報とコンピュータ」を融合して学習していくことは生徒の学習意欲にもつながることがわかった。
 しかし、現在の計画では2 年次に「ものづくり」1 8 時間と「情報」1 7 時間を融合するため、やや時間不足な面があり、発表会の深まりが無い面があった。そこで、設計時に部品のパーツを入力する場合に、天板、底板、側板の入力をあらかじめ入力しておき、振り子の部分に創意工夫を生かす場面を設定して、学習内容を精選すれば時間配分がうまくいくように考えられる。
 生徒の作品集もデータベース化して、サーバーに蓄積していくことで、後輩生徒がそれを参考として、この題材に生かせるようにして行くことで、より情報の利用価値が理解されていくものと考える。
 本実践は、研究発表という機会を頂き、これまで漠然と考えていたアイデアを1年間という短い期間で、取り組んでみたものである。今後は、この融合のアイデアをさらに拡張し下図のような形で、指導計画を考え、実践していければと考えている。


@ 技術・家庭科全体指導計画

1 学期 2 学期 3 学期
1 学年 生活の自立と衣食住 技術とものづくり( 1 8 時間)
情報とコンピュータ( 1 7 時間)
※ 両領域を必要に応じて、同時に実施
2 学年 技術とものづくり( 17 時間)
情報とコンピュータ( 18 時間)
※ 両領域を必要に応じて、同時に実施
家族と家庭生活
3 学年 情報とコンピュータ( 1 8 時間)(エネルギー変換)
生活の自立と衣食住
「技術とものづくり」で取り上げる題材や融合できる学習内容の部分の洗い出し、融合できない部分の時間のとり方などの検討を行い、本研究をより発展させたいと考えている。