題材例

応援団支部

(長生地区 小学校家庭科部会の実践)  〜 茂原市立西小学校 〜        

1 研究主題

      生活の中から課題を見つけ,解決していく学習を目指して

       〜 家庭や地域とのかかわりを大切にした食生活の学習を通して 〜

2 主題設定の理由

(1)社会的背景から

今日の児童を取り巻く社会状況や環境の変化は,児童にも大きな影響を与えている。共働きや核家族世帯の増加,塾通いや習い事などにより児童が家族とゆったりと過ごす時間は多くない。また,家庭で多くの児童が,一人でテレビを見たりゲームをしたりして過ごしていることも気にかかる。このような家族とのコミュニケーションの不足は,児童が成長し,やがて家族から自立していく上で必要な知識や技能を,家族から教えてもらい身につける機会を遅らせることにもつながっている。また,児童に教える立場にある家族も地域との関わりが少なく,地域を知らない親も増えているのも児童の自立への遅れにつながっている。

平成23年度から全面実施される学習指導要領では,実践的・体験的な活動,問題解決的な学習を通して,自分の成長を理解し,家庭生活を大切にはぐくむこと,日常生活に必要な基礎的・基本的な知識と技能を身につけること,実践的な態度の育成が求められている。

そこで,食生活の学習を中心に,児童の気づきからの「学び合い」での課題解決学習による基礎的・基本的な知識と技能の定着を大切にしながら,コミュニケーションを意識した多くの体験を重ねることで,家族の願いや思いに気づき,家族の一員として「家族を支えることのできる自分」を自覚し,「できた喜び」「感謝された喜び」を実感させていきたい。

(2)地域の実態から

本地区は,農産物直売所や4と9のつく日に学区内の商店街で開催される六斎市などで地元野菜を手軽に入手できる環境にある。また,食に関するボランティア活動も盛んで,学校ではそれらの方や保護者を,地元野菜や郷土食の調理の際にゲストティーチャーとして招き,協力していただける環境にある。そこで,家族と同様に地域とのコミュニケーションも大切にしながら,より豊かな人間関係を築くことのできる児童に成長してもらいたいと考え,本主題を設定した。

(3)児童の実態から

児童のほとんどが一食分の献立を立てるには,栄養バランスが大切であることを理解している。そして,炭水化物=ご飯(黄),タンパク質=肉・魚(赤),ビタミン類=野菜(緑)の食品を丁度よく摂ること,つまり,肉など自分の好きな食材の摂取だけに偏ることなく野菜を多く摂ることの必要性も理解しているが,偏食の多い児童も多く,給食では野菜の残菜が多くみられる。また,多くの児童が家庭で調理をした経験がある。家庭でもつくったことのある料理名には,家庭科の授業で調理実習したみそ汁,サラダ,卵料理や,宿泊校外学習での飯盒炊さんの際作ったカレーライスをあげる児童が多い。学校での調理経験が家庭生活に生かされていることが分かる。しかし,児童が家庭でつくる料理は学校で実習したものや自分の好きなものにとどまる。また,野菜の摂取の必要性を理解していても,地元野菜を含め知っている野菜や調理したことのある野菜の種類は少ない。地元野菜については社会科で学習した長ネギやトマトなど特産の野菜や学校で栽培している大根をあげる児童が64%いる中で,地元野菜が何なのか分からない児童も数名いる。登下校の時に畑の側を通っているにもかかわらず,普段栽培されている野菜については,地元の旬の野菜として調理の素材になると認識されていない様子がうかがえる。家族のためにつくりたい料理には,自分で調理することができる料理名をあげている児童が多い。栄養バランスなど家族のことを考えたり家族に喜んでもらえるようにと心情面での記述も少数だがあった。

以上の実態から本題材では「家族一員として,○○のために」という目的意識を持たせ,献立づくり,調理実習を行い,家庭での実践へとつなげていく。その中で地元野菜を使ってのレシピの紹介や栄養士の話,調理実習を通してそれらに興味関心を持たせ,地元野菜を進んで献立づくりに活用していうという気持ちを高めていくようする。

 家族を見つめ,家族に喜んでもらいたいという思いで家族のための食事を考えようとしながら,課題を見出し,話し合い活動を通して解決方法を考えたり,学習で得た知識及び技能を生活に生かそうとする実践的・体験的な活動を通して解決したりしていく。その中に地域人材による地元野菜を使った調理実習を取り入れたり,茂原市教育研究会小学校家庭科部会での「地元野菜を使った調理実習」で学んだレシピを紹介したりすることで自分たちの住む地域への関心を高め,地元野菜を使ったメニューづくりにつなげていく。授業では「家族の一員として,○○に喜んでもらうために」を合言葉に学習を進め,常に相手意識を明確にもちながら学習を展開していく。家族の中の人を対象とすることで,「おいしく食べてほしい」という思いを持つだけでなく,家族の健康や好みなどを意識して献立を考えたり,切り方や味付け,盛りつけなどを工夫したりしていくことにつながると考える。学校でのメニューづくりや調理実習の体験,その反省を生かし「家族の一員として,○○のために」と家庭のためのメニューを各自が考案し家庭実践につなげる。家庭には本題材の「家族の一員として,家族のためにつくる」「野菜を取り入れた調理を行う」という学習の主旨を文書で伝え,協力を呼びかけておくことで,家庭とのコミュニケーションが深まるようにしたい。また,家族から感謝される喜びを知ることで,進んで実践する態度を身につけさせたい。

3 研究のねらい 

(1) 自らの生活から課題を見つけ出し,解決していく学習を通して,より健康で豊かに暮らそうとする態度を育てる。

(2) 家族や地域とのつながりを通して,家族の一員として,また,地域の一員として進んでかかわり,生活していこうとする態度を育てる。

4 研究仮説

(1) 自分の食生活を見直し,「学び合い」による課題解決学習を進めながら豊かな食生活を送るための基礎的な力を身につければ,よりよい食生活を営む力が養われるであろう。

(2) 学習カードの活用や地元野菜の調理など,家族や地域への関心を高める学習内容を工夫すれば,体験したことを家庭で取り入れようとする実践的な態度が身につくであろう。

5 授業実践

学習の流れ

 

時間

 

児童の活動

身につけたい力

一食分の食事をつくろう

問題の発見

テキスト ボックス: ● 「朝食づくり」の学習や「食事調べ」から,自分たちの立てた献立やわが家の食事の工夫や問題点を見つける。
・ 野菜が少ない
・ 家で取れたピーマンをつかった。
・ 同じ野菜(大根)をよく使っていた。
・ バランスに気をつけている。

食生活を振り返り,課題を見つける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ 自分の食生活見直すことができる。

・ 普段の生活の中から、食に関する課題を見つけることができる。

 

10

問題の追及・

解決

 

テキスト ボックス: ● 1食分の食事作りについて情報を集め,発表しあう。 学び合い
・ 家の人は,食事作りでたくさんのことを工夫したり,気をつけたりしていた。
・ 簡単なものを時間をかけないで適当に作っていると思っていたけど違った。
・ 季節の野菜を多く使っていた。
テキスト ボックス: ●地元野菜の話を聞き,それを使った調理を行う。実践1テキスト ボックス: ●情報を活用し献立を考える。
・キノコが嫌いな妹の為に,大好きなエビを使ったメニューにする。
・弟の好きな鶏肉を使ったメニューを考える。
・家族に感謝の気持ちを伝えるようなメニューにしよう。
テキスト ボックス: ●立てた献立をもとに調理計画を立て,計画にしたがって一食分の調理実習をする。

実践する

 
テキスト ボックス: ●立てた献立を食品の栄養的なバランスや組み合わせを考えながら見直す。 実践2    学び合いテキスト ボックス: ●一食分の食事づくりについての情報を集め,発表し合う。学び合い

課題について調べる。

まとめる。

発表する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ 毎日の食事に関心を持ち,食事づくりの観点に気づくことができる。

・ 食事づくりにはいろいろな工夫があることを理解できる。

・ 地元野菜を使った食事づくりに関心を持つことができる。

・ 地域の方に教わった料理や家庭のレシピカード,ホームページなどを活用して1食分の食事を計画することができる。

・ 自分たちが立てた1食分の献立の計画をもとに調理計画を立てることができる。

・ グループで協力して安全に留意し手際よく調理を行うことができる。

反省・

まとめ

 

テキスト ボックス: ●食事作りの工夫についてまとめる。

振り返る。

 

生活に生かす。

 
 

 

 

 

 


・ 反省,評価

・ 家庭での実践

感謝の気持ちを伝えよう

問題の追及

テキスト ボックス: ● 感謝の気持ちを表すにはどんなものがあるか調べ,発表しあう。
学び合い
・ 誕生日やバレンタインデーではお菓子をつくる。
・ お祭りのときにおばあちゃんが太巻きをつくってくれる。

課題について調べる。

まとめる。

発表する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ 郷土料理に関心を持つことができる。

 

実践・まとめ

振り返る。

 
テキスト ボックス: ●お礼の手紙を書く。テキスト ボックス: ●感謝の気持ちを込めて,太巻き寿司を作る。 実践3

実践する

 

 

 

 

 

 

 

 

・ グループで協力して安全に留意し手際よく調理を行うことができる。

・反省,評価

 

6 検証授業

 

実践1

(1)目標

・地元や旬の野菜を使った食事作りに関心を持つことができる。(関心・意欲・態度)

(2)展開

学習活動と内容

時配

形態

指導上の留意点 評価(◎)

1 本時の学習のめあてをつかむ。

 ・自分たちの今までの生活では野菜が不足していることに気付く。

 ・ゲストティーチャーの紹介

野菜を取り入れたメニューについて知ろう。

 
 

 


2 地元の野菜や旬の野菜を使ったメニューについて話を聞く。

 ・じゃがいものお好み焼き

 ・鮭入りロール白菜

 ・五目きんぴら

 ・キャベツとリンゴのシチュー

 

 

3 副菜づくりを実践する。

 ・じゃがいものお好み焼きづくりを行う。

 

 

 

 

 

 


4 できたグループから試食をし,片付けをする。

 

 

 

 

6 本時の学習をまとめる。

・お礼の挨拶をする。

 

2分

一斉

 

 

 

 

10

一斉

 

 

 

 

 

 

20

グループ

 

 

 

 

 

 

 

10

グループ

 

 

 

 

3分

一斉

 

 

・ 一食分の食事の献立作りに役立てるために,自分たちの生活に不足している野菜を使った調理をすることを確認する。

 

 

 

・ 地元の野菜や旬の野菜にどんな物があるか事前に調べたり,観察したりして話が聞けるようにする。

 

 

 

 

 

・ 調理用具,食材は使いやすいように事前に準備しておく。

・ ゲストティーチャーの説明や作り方の掲示をし,調理の手順をつかめるようにする。

・ 安全,衛生,能率に配慮して調理するように助言する。(包丁やガスコンロの安全な取扱など)

◎ 調理計画にしたがって友達と協力して,安全に調理することができたか。(観察)

・ 試食の感想を話し合いながら会食できるようにする。

・ 油汚れを拭き取ったり,洗剤の量を考えるなど環境への配慮ができるようにする。

 

・ ゲストティーチャーの方にも感想をいただけるようにお願いしておく。

◎ 野菜を取り入れたメニュー作りに関心をもつことができたか(お礼の手紙,プリント)

 

<考察>

 普段,公民館活動等で指導をしている地域の方にゲストティーチャーにきていただいて,授業を行った。野菜を使った副菜というと生のまま野菜をつかったサラダというような献立しか意識していなかった児童も多く,そのままでは苦手で食べられないといった児童も工夫して調理することで食べることができた。授業後の感想から「実際に家に帰って作って,家の人に食べてもらった」や「今度は苦手なキノコを入れて作ってみたい」といった声が聞かれた。

 実践1までの学び合い活動を通じて,友達やゲストティーチャーから新しい情報や知識を得たことで,苦手な食材にも工夫を加えて食べてみるなど,よりよい食生活への実践意欲をもたせることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実践2

(1)目標

・栄養的なバランス,組み合わせ,調理法などを考えながら1食分の食事計画を立てることができる。                                  (技能)

・家族のために調和のよい1食分の食事となるよう,栄養のバランスや調理法などを考えて,自分なりに食品の組み合わせを工夫することができる。           (創意工夫)

(2)展開

学習活動と内容

時配

形態

指導上の留意点 評価(◎)

1 前時の学習をふり返り,本時の学習のめあてをつかむ。

 ・ 計画にそって,うまく1食分の食事ができた。

 ・ 野菜を使った献立がある。

1食分の食事計画を見直し,さらに工夫しよう。

 
 

 


2 提示した1食分の食事について,食事づくりのポイントをもとに意見を交換する。 

<食事づくりのポイント>

 ・栄養のバランス,食品数

 ・味付け  ・調理法

 ・色どり,盛りつけ ・野菜

 
 

 

 

 

 


3 1食分の調理計画について栄養士の話を聞く。

 ・ 栄養のバランスについて

 ・ 効率よく栄養をとる調理のし方や

  工夫について

 ・ 味付けの工夫について

 ・ 地元野菜のよさについて

 

4 1食分の調理計画を見直し,発表する。 

 ・ 野菜はゆでるとたくさん食べられ るので野菜サラダをスープに代えよ  う。

       

 ・ 色の濃い野菜をとるために,ほうれん草をゆでてスクランブルエッグ  にするとよいね。

         

 ・ 家族の好きなハンバーグに,大根  のサラダとカブとベーコンのスー   プを付け加えました。

 ・ お父さんが油を摂りすぎないよう  に,野菜炒めをおひたしに代えま  した。

 

5 本時の学習のまとめをする。

 ・ 栄養士さんにお礼を言う。

 

 

5分

一斉

 

 

 

 

 

5分

一斉

 

 

 

 

 

 

10

一斉

 

 

 

 

 

 

20

グループ

一斉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分

一斉

・ 児童が前時に計画した1食分の食事と教師が示した1食分の食事の写真を比較させ,見直しの必要性に気づかせ,本時のめあてにつなぐ。

 

 

 

・ 話し合いにより,提示された献立を食事づくりのポイントに照らし合わせてチェックし,よい点や改善点を確認する。

・ 食事づくりのポイントを掲示することで,これまでの学習が想起できるようにする。

 

 

 

・ 給食の献立を例に,献立の立て方,料理の工夫,栄養バランス,地元野菜のことなどについて話を聞く。

・ 地元野菜を例に同じ食品でも切り方,加熱の仕方,味のつけ方など調理法によって様々な料理になること,栄養価も違ってくることに気づかせる。 

 

・ グループで工夫や改善することとその理由を明確にした意見交換をさせ,献立や調理法の修正をさせていく。

・ 栄養士も机間指導に加わり,栄養バランスだけに偏った活動をしている児童に対しては,色どりや味のバランスも楽しい食事には必要であることに気づくように助言する。

・ どのような点を考えて工夫,改善したのか具体的に説明させる。

 

◎ 地元野菜を取り入れ,栄養的バランス,食品の組み合わせ,調理法などを考えながら1食分の食事計画を立てることができたか。

       (観察・学習カード)

 

 

 

・ 調理実習についてはグループごとに相談して献立を決定することを確認する。

<活動の様子>

 

 

 

 

 

 

 


                                      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


<考察>

 継続的に学習カードを活用したことにより,自分の家の食生活の工夫や家族への思いに気付き,「家族のため…」という意欲を高めることができた。

また学び合いの場面では,情報交換が活発にでき,献立作りに生かすことができた。

実践2の活動では,土睦小栄養士の先生に来ていただいて授業を行った。栄養のバランスがとれた献立を各自立てていたつもりでも,直接栄養士さんのお話を聞き,見直してみると偏りがあったことに気づき,改善しようという姿勢が見られた。

 

 

実践3

(1)目標

 ・ 地域の方をゲストティーチャーとして招き,感謝の気持ちを込めて太巻き寿司を作るとともに,郷土食について関心を深めることができる。(関心・意欲・態度)

(2)展開

学習活動と内容

時配

形態

指導上の留意点 評価(◎)

1 本時の流れを知る。

「太巻き寿司」をつくろう。

 
 ・ 材料,用具,つくり方の手順

 

2 ゲストティーチャーと一緒に太巻き寿司をつくる。

 

 

 

 

 

3 作った太巻き寿司を試食し,ゲストティーチャーと交流を深める。

 ・ どんな時につくっていたか。

 ・ どんな材料がよいのか。

 ・ 家でもつくれるか。

 

 

 

4 後片付けをする。

 

 

5 お礼の挨拶をする。

 

 

6 お世話になった先生方にお礼の手紙とともに太巻き寿司を届ける。

10

一斉

 

40

個別

 

 

 

 

 

15

グループ

 

 

 

 

 

 

10

グループ

 

5

一斉

 

10

グループ

・ お世話になった先生方などへ感謝の気持ちをこめてつくることを確認する。 

 

・ ゲストティーチャーの紹介を行い,学習内容を確認する。

・ 地域の食材を使っていることを説明し,関心を高める。

・ 形が崩れないよう,巻きすのごはんの量や具材の並べ方など盛り付けのし方に注意するよう声かけをする。

・ ゲストティーチャーの話から,太巻き寿司は祭りや人の集まる時に食べたものであることやその家庭によって巻き方や具材に工夫があることなどを教えてもらい関心を高める。

◎ 地域の方と交流し郷土食の太巻き寿司づくりに進んで取り組むことができたか。 

(観察・お礼の手紙)

 

・ 役割を分担し協力して行わせる。

 

 

・ ゲストティーチャーの方々にも感想を話していただく。

 

<活動の様子>

 

 

 

 

 

 

 

 

<考察>

 太巻き寿司を見たり,食べたりしたことはあったが,作ることは,ほとんどの子どもが初めての体験で,「上手に模様ができるかな?」「失敗しないかな?」と最初は不安な表情の児童が多く見られたが,太巻きの切り口から花の模様が見えると,どの子も大きな歓声をあげ,満足そうな表情を浮かべていた。今回は,今までお世話になった先生方への感謝を表す贈り物として太巻きを作ったが,学習後の児童のお礼の手紙から,「家でも家族と一緒に作ってみたい」や「今度は家族に感謝の気持ちをこめてつくってみたい。」という言葉が多く見られた。太巻き寿司が地元に伝わるおもてなし料理であることに気付き,作る楽しさを味わい,地域に伝わる伝統料理に関心を深めたようである。

 

7 成果と課題

成果

(1) 身近な家庭の様子を観察し,そこから食生活における課題を見つけ,それらを解決していくために「学び合い」によるグループでの学習を取り入れたことにより,「家族のために」という目的意識を持ち,友だちと協力して学習を進めることができた。また,一食分の献立作りにおいては,これまでの学習カードを使った実践の積み重ねで得た,様々な情報を活用し意見を交換し合いながら,食品の組み合わせや調理法を工夫し,よりよいものへと修正していくことができた。

(2) 今まで畑に栽培されていても気づかなかった,地元野菜を使った料理の紹介や調理実習の実施により,それらを使った調理に興味を持ち1食分の献立に取り入れることができた。また,ゲストティーチャーとして食育ボランティアや地域の方を招き,旬の地元野菜や郷土食の話を聞き調理実習したことで,今まで気づかなかった「地域のよさ」に気付き,関心を高めることができた。また,児童の取り組みを理解して協力していただける地域人材を開発することができた。

(3) 「学習カード」の継続的な活用により,学校での学習と家庭実践を効果的に結びつけることができ,家庭でも「家族のために」という意識をもつことができた。また,友達のカードを見て,自分の参考にして,調理する児童も見られた。保護者と児童がお互いを感謝する声も聞かれるようになり,家族の一員としての意識も深まり,家族を大切にする心をはぐくみ始めた。家庭科で育てたい調理の技能も家庭での継続実践により定着を図ることにつながり効果があった。

課題

(1) 児童の家庭環境はそれぞれ異なり,安全面や忙しい中での時間のやりくりの困難さなどの理由で児童に食事の一品をまかせることを保護者が負担に感じるという意見や,活動を見とどけた後のカードの記入が大変であったという意見が少数ではあったがあった。学級通信などを有効に利用し児童が学校で学んだことなどの情報を載せたり,授業参観などを活用したりして家庭科の取り組みを保護者に理解してもらえるようにしたが,簡単かつ効果的に記入できるカードを工夫していきたい。

(2) 生活体験の少ない児童が増えている中で,体験的な活動を多く取り入れ,それらを家庭実践に結び付け「できた」,「喜んでもらえた」ことを実感させていきたい。そのために,地域性を考慮した人材開発や教材開発にさらに一層努め2年間の家庭科の指導計画の中に組み入れていきたい。